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ブルジョアの愛人
第13章 梅雨冷えとカーディガン

昼休み、職員室でぼんやりと机に向かっていると、養護教諭の寺内が大塚の肩に触れた。

古典的な女教師を思わせる金縁眼鏡越しに、細い目が悪戯っぽく微笑みかけてくる。

大塚よりひと回り以上年上の彼女は高校生になる娘も旦那もいるはずだが、どうも大塚に好意的というか、べたべた甘えてくるのだ。

年配の男性教師にあまり好かれない大塚は、他の教師の中に溶け込めなていなかった赴任当初は寺内の好意を有難いと思ったものだが、最近は正直うざったく感じる。

「どおしたんですかぁ、またなんか悩んでるの? あ、ニキビのこととか」

「ええ、まあ」

こういったちょっかいには、適当に相槌を打っていれば相手が飽きてすぐにどこかへ行くものだ。

この手の女には、露骨に嫌悪を示すと彼女らのプライドに障って癇癪を起こすから我慢強く耐えるのが良策だろう。一番良いのは、大塚より可愛い"年下の男の子"を見つけてもらうことなのだが。

案の定、寺内はそれから二分ほど話した後、すぐにどこかへ行ってしまった。彼女に触られた肩に荒れた手の感触がまだ残っている。

何ともいえないくすぐったさが不快で、人目のつかない場所で払おうと席を立つと職員室に樹里に入って来た。
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