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ブルジョアの愛人
第13章 梅雨冷えとカーディガン
痛々しいほど鮮やかなチェリーピンク色のランドセルを放り投げ、ベッドに飛び込んで頭から布団を被る。樹里は泣きたい気持ちで一杯だった。
五、六時間目の授業でも帰りの会でも、自分だけ大塚に辛く当たられているような気がしてならなかった。きっと職員室で声を掛けられたとき、思わず無視してしまったせいだ。
授業中、手を挙げても全く当ててもらえないし、わざわざ自分の消しゴムを持って行き、落とし物を拾ったと嘘をついても大塚の態度は冷たかった。分かった、もありがとう、もないのだ。ただ冷めた視線で頷くだけ。クラブは適当に理由をつけて休んだ。これ以上大塚と同じ空間にいられそうになかったのだ。
嫌われた。その四文字がぐるぐると頭の中を巡る。
涙は出てこなかった。だから涙は流さず泣いた。湿ったにおいのする布団を噛み、声が出ぬように。
暫くそうした後で、ふと思いついて机の上に置いたスマホを手にする。以前ならこっそり学校に持って行き、休み時間に下っ端とぺちゃくちゃ喋りながらいじったものだが、スマホは現在ずっと家で留守番中だ。学校に持って行く意味がないからだ。
飯尾から連絡は来ていない。もう来るはずがない。だが、何かの間違いでもいいからもう一度連絡が欲しいと思ってしまう。
そしてつい飯尾にLINEをしそうになって自分に我慢を強いる度、スマホをぶち壊してしまいたい衝動に駆られるのだ。