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ブルジョアの愛人
第14章 狂器の姿
男は諦めたように、ひとつ溜め息をついた。
「家まで送って行くよ」
この話を続けることを拒んでいるようだった。女も、男の先程の剣幕に気圧されたようで、抗うことなく素直に頷く。
二人が乗り込んだ車は、偶然にもスカイラインだった。しかし浩晃が乗っているV37ではなく、ひとつ前のV36。
V36まではエンブレムがインフィニティではなく日産であるため莉菜は気づいていないが、それは二年も前に放送していたドラマから今の浩晃と莉菜へのメッセージのようにも取れる。
夜だというのに、テレビの中の街は明るかった。浩晃のマンションがあるビジネス街の明かりが豆電球の光に思えてしまうぐらい。
ロマンチックなシチュエーションのはずだが、車内には葬式のような空気が漂っている。私達はこんなんじゃないのにな、と莉菜は少しだけ優越感に浸った。