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ブルジョアの愛人
第15章 主菜は食前酒のあとに
何となく気まずい。真緒もそれ以上何と言ったら良いか困っているようだ。
「それでね真緒ちゃん、さっきの話なんだけどさ」
さっきの話というのは、優々の好きな人の話だ。
「真緒ちゃんは、好きな人いないの?」
「えぇっ?」
真緒は少し面食らったようだ。まさか自分のことを訊かれるとは思っていなかったのだろう。丸っこい目が更に丸くなっている。
大きな黒目で天井を睨み、三十秒ほどううんと唸っていたが、やがてまた諦めたような困ったような表情を優々に向けた。
「…考えたこと、なかったかも」
今度は優々が「えぇっ?」だった。年頃の女の子なのに。クラスの子は皆好きな男の子と惚れた腫れたできゃっきゃ騒いでいるというのに。
「私、友達の恋バナは好きだけど、あんまり恋はしないかな」
そうなんだ、と相槌を打った優々は、膝をついて崩れ落ちたい気分だった。漫画なら「ガーン」という効果音が描かれるところだ。
好きな男の子がいないというのは安心したが、あまり恋をしないという発言はかなりショックだった。
いつか想いを伝えようと思っていたが、友達のままでいい。側にいられるなら、友達のままがいい。優々は今にも歪みそうな顔で必死に笑顔を作った。