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ブルジョアの愛人
第2章 秘密の花園
莉菜はどうしていいか分からず、ただ浅い呼吸を繰り返す。小さな肩が大きく上下する度、浩晃の胸は締めつけられた。
「シャワー、浴びておいで」
浩晃が呟くように言うと、莉菜はこくんと頷き、俯いたままバスルームへと向かって行った。
莉菜はなぜだか少し泣きそうになる。一緒に入りたかったとわがままを言えないのは、自分の立場を世間が何と呼び、どんなことを言われるのか分かっているからだ。
莉菜が求めているものが父親の愛情だけならば、莉菜もこんなことでここまで傷つかないはずだ。
樹里に一緒に入ろうと誘うとヤクザのような目で睨まれるせいで、莉菜も自分と風呂に入るのは嫌なのだろうと浩晃は勝手に思い込んでいるのだ。
娘ぐらいの年頃の女の子にとって、四十を過ぎた自分など汚ならしいものなのだ。莉菜だって、本当は樹里と同じように思っているはず。
浩晃は、壁に掛けられた鏡に映る中年の男の顔をぼんやりと見つめていた。