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ブルジョアの愛人
第16章 危険な三分割
パサパサしたクロワッサンを牛乳で流し込む。単純作業を何度も繰り返すが、クロワッサンはまだ半分もある。小さなパンを半分食べるのに十分近くかかった。
もともと食べるのは速い方ではない。いつも給食を食べ終えるのは最後から三番目ぐらいだ。少し前までは莉菜がいたから四番目だったのだが。
だが朝は起きてすぐ朝食をとるため、もっとゆっくりになる。十分を過ぎた頃から母の麻里子が苛立ち始めるのが寝ぼけ眼でもはっきりと分かる。
スマホのアラーム音で目を覚まし、まず最初に考えるのは大塚のことだ。
平日、学校、面倒くさい。大塚センセ、冷たい。ケイサツ――
ぼんやりとした頭に浮かんだそれらの単語を整理するように咀嚼する。この頃は本当に学校へ行くのが嫌になってきた。
以前であれば、だるいと思いつつもわりと軽い足取りで学校へ向かったものだが、今は靴に鉛を付けられたような足取りである。だが仮病を装って休んだりはしない。一度休んでしまうと、もう二度と学校へ行けなくなりそうな気がするのだ。
十五分かけてパンひとつの朝食を終え、歯を磨く。鏡は見たくない。寝起きはひどい顔をしているからだ。特に月曜の朝は。
しかし、莉菜が苦しむ様子を楽しんでいたときの方がよっぽどひどい顔だった。樹里は知る由もないが。