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ブルジョアの愛人
第16章 危険な三分割
やはり大塚は、どことなく樹里を避けているような気がした。だが――
「また相談?」
眉をひそめつつも、その日の昼休みに時間を取ってくれた。仕事だから仕方なく、といった体でも、願い事を受け入れてもらえたことが嬉しかった。
「今度は何」
パイプ椅子が軋む。日当たりの悪い、じめじめとした特別教室の空気やパイプ椅子の冷たさは、大塚の機嫌を更に傾けているように思えた。
早く切り出さねばと焦るが、用意していた相談事がなかなか喉から先へ出てこない。
強張る背を硬い椅子にあずけ、大塚の手もとに視線を泳がせた。日焼けはあまりしていないが、筋が浮き、骨ばったそれは充分男を感じさせる。
「言いにくい?」
樹里は目を伏せて頷いた。
「なら俺から話したいこと先に言うけど」
一人称がもはや「先生」でなくなった。先を促すように再び頷くと、ジャージの生地が擦れる音がした。腕を組み換えたのだろう。