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ブルジョアの愛人
第16章 危険な三分割
「そもそも何で俺を言いなりにさせたかったんだ」
分かっている、と樹里は確信した。大塚は樹里の気持ちを分かっていてこんな質問をしているのだ。弱みを握りたいのか、ひれ伏させたいのかは分からないが。
「大人を馬鹿にして楽しいか」
樹里が女王様のままだったらこんなこと絶対に言わなかったくせに。醜い自信や優越感に満ちた狡い男だと思う。幼稚で分かりやすく、自分の頭で物事を考えるのが苦手な小学生。
「ごめんなさい」
しかし樹里はこの小学生レベルの男が堪らなく好きなのだ。この男の腕に抱かれ、頭を撫でて慰めてもらえる日を夢見て涙ぐんでしまうほど。
クラスメイトにならどれだけ嫌われてもいいから、この男にだけは嫌われたくないと思った。
あんな狡い手を使って嵌めたのに、まだこんな図々しい願い事をしてしまうなど汚ならしいことだ。
だがそんなことはどうでも良いのだ。ただ味方でいて欲しい。いや、味方でなくても良い。あの小さな目でしっかりと樹里の存在を認めてさえくれれば。