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ブルジョアの愛人
第16章 危険な三分割

先生のことが好きだったから、あんなことをしました。

樹里の小さな口からその言葉が出てくるのを、辛抱強く待った。

樹里と向かい合った途端、無性にそう告白させたくなったのだ。

彼女が大塚に好意を抱いているのではないか、と感じたのは、金曜の帰りの会の前。

シカトされてムッとしたから大塚も樹里に冷たく当たっていたのだ。そうしたら彼女は、落とし物を拾ったと言って大塚のもとへやって来た。

不自然だな、と思った。落とし物を拾って届けるなどという親切な習慣は彼女にあるはずがない。それに彼女は、落とし物らしい消しゴムを自分のペンケースから取り出して持ってきたのだ。

もしかしたら、嫌われたかもしれないと焦り、大塚の気を引こうとしたのではないか。

そんな考えが頭をよぎったのは放課後のクラブ活動の時間だった。

なぜ大塚が態度を変えた途端に焦ったのか――大塚を男として好きだったから。大したことでもない「弱み」をわざわざ持ち出し、脅してきたのも合点がいく。

どうしてこんなちっぽけな少女を怖がっていたのだろう。

末恐ろしいと思っていた樹里は、蓋を開けてみれば単純で、純粋で、ちょっとばかり普通以上のエゴが表に出た少女だったのだ。だからといってクラスメイトを傷つけてきたことが許されるわけではないが。

大塚は、それでも彼女を愛しいとは思えない。
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