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ブルジョアの愛人
第16章 危険な三分割
「センセ」
何、と返事をすると、樹里は顔を上げた。
「センセのこと男として好きです」
告白にしてはあまりにも平べったい声で、誠実さにも欠けるが、それが本心だということを大塚はよく分かっていた。これで三分の二は吐き出せただろう。
「ありがとう。嬉しいよ」
「別に、また付き合って欲しいとかそういうことじゃないんだ。ただそれだけ分かっててくれれば」
随分身勝手な話だが、大塚は頷いた。元女王に告白させた優越感で身体はふわふわと浮いているような感覚である。
「相談って、それだけじゃないんでしょ」
すると、樹里の顔が途端にひきつった。表情筋がみるみる強張っていくのがおかしいぐらい分かる。
「信じてもらえないと思う」
「信じるよ」
大塚は胸を張って答えた。しかし、それでも樹里はまだ躊躇っている。目があちこちへ泳いでいた。
樹里の口から語られるそれをじっと待つ。心臓の音がこちらまで聞こえてきそうなぐらい、彼女は緊張している。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。そして彼女は唇を湿らせた。
「人を…殺しました」
大塚は残りの三分の一を、甘く見すぎていた。