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ブルジョアの愛人
第17章 午前一時のダークスーツ
少し前までなら明るく話していた学校のことももう話せない。
終業式まであと一ヶ月ほどだというのに、莉菜が未だに登校していないことは浩晃も知っている。樹里から聞いたわけではない。莉菜が夕方、珍しく長文のメールで打ち明けたのだ。
浩晃はもはや樹里と話すこともなくなっていた。この頃は学校へ行きたくないとぐずることもあるらしい。昨日ついでのように麻里子が言っていた。
ついでというのは、浩晃に関するあまりよろしくない噂を耳にした、という話が本題だったからだ。
もちろん噂は、樹里の同級生たちが大声で喚き散らしていた、浩晃が娘のクラスメイトを金で買っているというもの。
滅多に話をしようとしない麻里子がテーブルを挟んで向き合った時点でそれなりの覚悟はしていたが、やはり改めて妻の口から聞かされると冷水を浴びせられたような衝撃を受けた。
どこで耳にしたんだ、と尋ねても、こちらが先に訊いているんだ、としか麻里子は言わない。正直に答えるしかないのか、と腹を決めた。
だが、半分は正直に言い、半分は嘘をついた。まず不倫をしていたことは認めた。だけど相手は娘のクラスメイトなどではなく、会社に勤めている女の子だと言った。
じゃあなぜ相手が娘のクラスメイトだなんて言われてるの、と更に責められると思っていた。だから数秒のうちに解凍中の脳みそで言い訳を必死にひねり出したのに、麻里子の反応は浩晃の予想を大きく外れた。