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ブルジョアの愛人
第18章 紫陽花を添えて
片田舎。この地域にはまさにそんな言葉がぴったりだと真緒は思う。
最寄りの駅が遠いわけでもなく、ビジネス街も近いが、どこか閉鎖的な町。もちろん近所の噂話も頻繁に飛び交う。だから真緒はこの町が嫌いだった。高校は市外の学校へ通うつもりだ。
そんな町だから浩晃逮捕の話が小学校でも囁かれ始めたのは驚くほど早かった。まだマスコミも報道していないというのに、翌朝にはもうクラス皆が知っていた。
伝わり方としては、中央署の刑事が飲み屋のママにこっそり教え、ママが夫に話しているのを子どもが盗み聞きし、その飲み屋の子どもがクラスで話す、といったところだろう。片田舎といっても、情報網は侮れない。
真緒と優々が噂を耳にしたのも、クラスメイトの口からである。しかし、二人はさほど驚かなかった。逮捕も時間の問題だと思っていたからだ。
大して驚かなかったのは二人だけではない。浩晃と莉菜の関係、または浩晃が援交しているという噂を知っている児童はほとんど二人と同じような反応だった。そしてその中の多くは、楽しげな表情を浮かべるのだ。
ただ、ごく一部だけは怯えたような反応を示した。愛海をはじめとする2組の児童だ。
まさか本当に警察が逮捕に踏み切るとは思ってもみなかったのだろう。樹里が今日登校して来ないことを必死に祈っているはずだ。