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ブルジョアの愛人
第19章 絆創膏をくれた人
さすがにもう警察は家にいないだろうと踏んだが、甘かったようだ。無駄に目立つ家の前に、パトカーが停まっていた。
軽く目眩がしたが、ここまできたらもう全て吐いてしまいたかった。
わざと大きな音をたててドアを開けると、珍しく慌てた様子の麻里子に出迎えられた。
「えっと、ママ何がなんだか分かんないだけど警察の人があんたと話したいって…」
軽いパニック状態の麻里子を、朝とは違う男性がなだめる。
「お母さんにはちょっと席を外してもらいますから」
不満顔の麻里子は、何度も樹里の方を振り向きながら若い警察官に優しく手を引かれて樹里の部屋へ入って行った。
玄関で出迎えてくれた年配の刑事は、ランドセルを背負ったままの樹里に座るよう促した。
「どうして呼ばれたか分かるかい」
刑事はなるべく優しく問いかけているつもりなのだろうが、鋭い眼光や広い肩は威圧感がある。
とぼけても苦しくなるだけだ。樹里は素直に頷いた。
「わざわざ警察に話を聞かれなくてはいけないことをしたという自覚はあるんだね」
樹里はまた頷く。
「じゃあ、飯尾将希という男性にされたこと、したこと、少しずつでいいから話してごらん」
ふえええん。目の前の刑事も驚くほど大きな泣き声が家中に響き渡った。