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ブルジョアの愛人
第20章 どこへも行かないで

「ごめんなさい…」

今度は上っ面の謝罪ではなかった。心の底から莉菜を愛し、心配してくれる祖父を裏切ったことへの「ごめんなさい」だ。

「分かってくれたなら良かったよ。さすが俺の孫だ」

「悪いことしたのも"さすが俺の孫"なの?」

「ハハッ違ぇねえ」

それが、莉菜が見た祖父の最後の笑顔だった。

祖父は翌日、仕事へ向かう途中にスクーターの運転を誤って亡くなった。
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