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ブルジョアの愛人
第22章 おとなツインテール
「私、四年前に施設を出て、二年前に全教科高卒認定試験に受かりました。それで、この前教育大学の試験があって、今日結果が出たんですけど…」
「おいおい、すごいインテリだな」
大塚は真顔だった。樹里は微笑み、続ける。
「合格でした」
大塚が頼んだモカが運ばれて来た。彼女が去るのを待ち、大塚は口を開いた。
「おめでとう。すげえじゃん」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げると、ツインテールも倣ってお辞儀をした。
「わざわざセンセに言いに来たのは、まだ言いたいことがあるからで…」
「ええ、何? 付き合って欲しいとか」
樹里は唇を噛んだ。それ以外に何があるというのだ。
その様子を見て大塚は目を丸くした。本当に冗談のつもりだったようだ。居心地悪そうにそわそわしている。
「センセ、私こないだ二十歳になりました。私教師になるって施設で決めたときから、大学に受かったらセンセに告白しに行くって決めてたんです」
本当だった。例の先輩には「純愛過ぎ」と笑われたが、ずっと本気だった。
「えっと…ありがとう」
「センセ、私は小学生の頃からセンセのことが男性として大好きでした。私で良ければ…付き合ってください」
大塚は樹里の視線に耐えきれなくなったようだ。コーヒーカップに目を泳がせ、口を小さく開閉させている。
「ちゃんと、目を見ていただけませんか」
弾かれたように視線を上げ、樹里の鼻のつけ根辺りを見た。まだ目は据わっていない。
「俺、結婚してるんだ」
左手の薬指には何もなかった。