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ブルジョアの愛人
第23章 幸せは彼へのお礼
祖父の葬式では、文字通り居場所がなかった。喪主を務めた祖母が「莉菜に話しかけるな」と言っているような視線を参列者に投げ掛けているような気がしたが、案外気のせいではなかったかもしれない。
莉菜は祖父に手紙を書いたのだが、それすら読ませてもらえなかった。だがさすがに棺桶に入れるなとは祖母も言えないため、莉菜はその手紙を祖父の冷たい手に握らせた。祖父はとても穏やかな顔をしていた。
浩晃が逮捕されてから、祖父の存在が唯一の救いだった。友達は誰も来なくなった。しかしその祖父も、莉菜が殺したも同然――
三人で暮らした家には、どこから湧いてくるのかというぐらい親戚や知人と名乗る大人が押し掛けて来た。
途方に暮れる莉菜に優しい言葉ひとつ掛けてくれない彼らが家に足を踏み入れる度、莉菜は祖父との思い出を凌辱されるような感覚にとらわれたのだった。
小学校には一切行かなかったが、中学校からは毎日通った。知り合いのいなさそうな、バスで一時間掛かる中学へ。
中学では、さすがに樹里や愛海ほどひどい子はいなかった。少しばかり意地の悪い同級生は女子にも男子にもいたが、何もない限りは穏便に過ごせた。