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ブルジョアの愛人
第1章 キャンディキャンディ
彼女の心のように真っ白なシーツがぼんやりと闇に浮かぶ。そのシーツにくるまった莉菜の耳に、聞き慣れたスカイラインのエンジン音が祝福の鐘のように鳴り響いた。
不意に心の鐘を鳴らされた莉菜は飛び起き、細い月明かりが差し込むカーテンの隙間から真夜中の国道を見下ろす。
微かな、しかし大きな期待が彼女の胸にポッと火を灯しているようだった。
そして案の定、そこには莉菜の恋人のスカイラインが停まっていた。銀色に艶めくそれは、彼女を舞踏会へ運ぶかぼちゃの馬車である。
そのとき、胸の高鳴りを代弁するように勉強机の上で携帯が震えた。
着信音は「キャンディキャンディ」。莉菜はキャンディキャンディを知らないが、恋人が「莉菜にぴったりの曲だよ」とダウンロードしてくれたので、莉菜はこの曲が気に入っている。禁断の週末の夢物語のオープニングテーマに相応しいかどうかは分からないが。
新着通知のランプが点滅する携帯を開くと、恋人からメールが来ていた。
暗闇の中なのでよく見えないが、可愛らしいコーラルピンクの携帯は、莉菜の小さく白い手によく馴染んでいた。これも彼からの贈り物である。
この携帯に登録されているアドレスは一件しかない。莉菜が携帯を持っていることは家族にも内緒だ。送り主はもちろん――