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ブルジョアの愛人
第2章 秘密の花園

午前二時半。浩晃は、ちらりと助手席で寝息を立てる彼女を見る。莉菜は車が発進するとすぐ眠ってしまった。今週の二人の夢物語が幕を閉じようとしていた。

浩晃は一旦停車し、後部座席から鞄を引っ張った。財布から福沢諭吉の札を三枚抜き出すと、浩晃はおもむろに莉菜のバッグにそれを突っ込んだ。

別に援助交際のつもりなどない。ただ、親のいない莉菜に、不自由ない暮らしをして欲しいから――浩晃は自分に言い聞かせ、そっと右手で莉菜の頬に触れた。

柔らかく、すべすべとした若い肌に硬い掌に馴染む。無防備な寝顔が可愛らしく、ずっと触れていたいと思わずにはいられないが――誰かに見つかる前に莉菜を送り届けなければいけない。

浩晃は名残惜しい右手でハンドルを握り、闇の中へと車を走らせた。
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