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ブルジョアの愛人
第3章 二人の少女
樹里はまたゆっくりと唇を開いた。
「樹里の言う通りにしてくれるなら、黙っててあげてもいいよ」
その声は、樹里には珍しく自信がなさそうに震えていた。樹里は目を伏せる。長い睫毛が大きな瞳に影をつくった。
しかし、大塚は樹里の表情など見ていなかった。大してやましいことでもないのに、莉菜の脚を見ていたことを言われてそれどころではないのだ。大塚は生唾を飲み込んだ。
「い、いいの?」
情けない程に掠れた声に、樹里はハッと顔を上げた。怯えているとさえ受け取れた先程の表情とは一転、いつもの高慢さを取り戻しつつあった。
やっぱり駄目などと言われたらどうしよう――まだ冷静になれずに、大塚の胸には不安と恐怖が渦巻いていた。樹里が黙ったのを、大塚は自分を品定めされていると勘違いしたのだ。
大塚を見下すように、樹里はふっと微笑んだ。
「よろしくね、センセ」