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ブルジョアの愛人
第4章 大好きな先生
「小林さん」
帰りの会が終わり、ランドセルを背負って廊下に出ると後ろから声が掛かった。反射的に振り返ると、ぱたぱたと可愛らしい足音を響かせながら駆け寄って来たのは樹里だった。莉菜は思わず表情を強張らせる。
「クラブ、一緒に行こっ」
莉菜の肩の辺りで、樹里は不気味な程に優しい笑顔を見せる。口調は穏やかなものの、その表情と声には有無を言わせぬ威圧感があった。莉菜はぎこちない仕草で頷く。
莉菜は一輪車クラブに入部している。教室では一人だが、クラブ活動がある放課後は陽平と真緒に会える。だから放課後は、莉菜にとって唯一、平日の安らげる時間なのだ。
――それなのに。
五月から、一輪車クラブに樹里が入部してきたのだ。なぜクラスの女子で一番運動ができる樹里がわざわざ一輪車クラブに入ったのか、莉菜には全く分からない。
訝しげに樹里を盗み見る莉菜とは裏腹に、樹里はこれから始まるクラブ活動の時間が少しでも長く続けばいい、と胸を踊らせていた。