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ブルジョアの愛人
第5章 恋火にマッチ
莉菜はまだ俯いたままだ。このままでは計画が成功しそうにないと急に焦る樹里が立ったまま対策を考えていると、莉菜がおもむろに顔を上げた。
「樹里さん…」
散々泣いたであろう瞳は、ただ失望と蛍光灯の光を映し、だが輝くでもなく樹里を見据えている。
「ごめんなさい」
樹里は頭を下げた。二つに結んだ長い髪もふわりと続く。
「樹里のせいだよね。樹里が、先生に怒られたなんて愚痴ったから…」
「ふざけんな! 学校に化粧して来ることがおかしいんだろうが!」
そうだ、樹里はマスカラをつけて登校して来たのだ。それを莉菜を含む下っ端五人にだけ話したのだが、それがなぜかバレて先生に怒られたと莉菜以外の下っ端に嘘をついた。
真緒は、樹里が莉菜にチクられたと吹き込んだのは自分じゃないとアピールしたのが気に食わないのだ。真緒は天敵を威嚇する肉食動物のように樹里を見つめていた。
その時、保健室の扉が開いた。四人が同時に振り向く。入って来たのは、間抜け面をした大塚だった。