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ブルジョアの愛人
第5章 恋火にマッチ

大塚は職員室へ、樹里は泣いた跡を必死に隠して教室へ向かった。

「樹里さん、大変です!」

嬉しそうな表情を隠しきれていない女子児童が、樹里を見るなり駆け寄って来た。

事の顛末を聞いた樹里も、緩む頬を引き締めるのに苦戦した。予定通りだ、と思った。保健室へ向かう途中、莉菜がどんなふうになっているか楽しみでスキップをしそうになる程。

莉菜の両脇に、真緒と、かつて樹里のクラスメイトだった女子児童がいた。保健室の先生は席を外しているようだ。樹里がゆっくりと近づくと、気づいた真緒が赤い目で樹里をキッと睨む。

「てめえ…」

唇がわなわなと震えている。鬼のような顔をしていた。樹里も思わず足を止める。今にも掴みかかりそうな真緒を優々がなだめるが、真緒の表情が和らぐことはなかった。
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