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ブルジョアの愛人
第7章 花はここに
だが浩晃は小さな手を制した。
ハッと浩晃を振り向いたとき、思わず目が合った。莉菜は咄嗟に目を逸らしたが、今までにないぐらい情欲に濡れた浩晃の強い眼差しをちゃんと見たはずだ。
「ひとりで気持ち良くなっちゃだめだよ」
温かいものが耳に吹きかかる。大好きな声をこんなに近くで聞けることに悦んでいるのか、莉菜は今にもイキそうなぐらい痙攣が止まらない。
「可愛いよ。愛してる」
浩晃はキスをやめたかと思うと、今度は顔の輪郭から首筋にかけて唇で撫で始めた。大好き、大好きと囁きながら。
愛してる、大好き。こんなにも莉菜の心を満たす言葉はない。浩晃の声で、セックスの最中だから、ということもあるのだろうが。
しかし莉菜が欲しがっている言葉をいつも分かっているように、浩晃は愛してるとキスをする。魔法が解けたように激しい痙攣から解放された莉菜も、大好きと呟いた。
目を瞑ったときは誰もがキスを求めるように、浩晃も莉菜も行為の時には愛の囁きが欲しくなるのだ。
先週のシャワー前の出来事では気持ちがすれ違っていたのに、今ではこうして気持ちが通じ合っている。その差は二人にもよく分からないが、付き合いはじめの恋人なんてそんなものだろう。