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ブルジョアの愛人
第9章 秘密はご馳走
昨夜の熱のまどろみから莉菜を引きずり出したものは、玄関チャイムだった。それに続いて祖母の話し声が聞こえたかと思えば、「真緒ちゃんとお友達が来てくれたわよー」と怒鳴られる。
絶頂の嵐の中をさまよった身体はひどく重い。莉菜は鉛のような身体を無理やり起こし、寝起き丸出しの不機嫌な声で「どーぞー」と怒鳴り返した。
だが真緒と優々の神妙な顔を見た瞬間、身体が少し軽くなった気がした。
「莉菜、そのカッコ可愛い」
真緒が噴き出すと、つられて優々も噴き出した。何が可笑しいのかと鏡を手に取ると、髪はぐちゃぐちゃで短い部分は横にピンと立ち、半開きの目はぼんやりと自分を見据える間抜け面の女の子がそこにいた。
慌てて髪を手櫛でとかすが、莉菜の癖っ毛は指に絡みついてなかなか直らない。しまいにはパジャマのままだということに気づいてもっと慌てる始末だった。
「やだ恥ずかしい…ごめんね、こんなカッコで」
顔を真っ赤にして俯く莉菜を見て、真緒と優々はホッとした。あんなにあわてふためくだけの元気があって良かった。もしかしたら布団から出られないぐらいショックを受けているかもしれないと心配していたのだ。