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ブルジョアの愛人
第9章 秘密はご馳走

外に聞こえるのを恐れるように莉菜がぽつりぽつりと話し始めた内容は、男子とセックスはおろか付き合った経験すらない二人にはとても信じがたいものだった。

「ごめんね、嘘なの」莉菜のそんな言葉を期待していても、莉菜ははにかむどころか顔を上げようともしない。

「四月の参観日に、ほんとたまたま、樹里さんのお父さんと帰りが一緒になって…お母さんは懇談会で学校に残ってたし、樹里さんはそのまま友達のところに遊びに行って…車、乗せてもらって…」

小学生らしさの欠片もない絵空事だ、と真緒は思った。山崎賢人と付き合ってるの、という話がどんなに可愛らしいものか。

だがそれと同じぐらい、いやそれ以上に信じられない莉菜の秘密は、あまりにも生々しく、愛に飢えた莉菜だからこそ犯してしまった過ちだと納得しそうになってしまう。だからこそ恐ろしいのだ。

優々は声を出すことすら忘れ、大人しい莉菜の告白を受け止めきれないまま聞き入っていた。真緒は――自分でも驚くほど冷静に、相槌を打っていた。
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