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ブルジョアの愛人
第9章 秘密はご馳走
今朝莉菜が学校を休みたいと言ったとき、祖父は「ゆっくり養生しなさい」としか言わなかった。
きっと今年度に入ってから学校であまりうまくいっていないことを知っていたのだ。莉菜が心に病を抱えつつあったことも。
しかし、祖母とはまだ喧嘩中である。朝食の席でも、祖父と祖母は一切口をきかなかった。学校へも祖父から連絡した。
莉菜は、祖母のことはあまり好きになれないが、祖父は大好きである。叱るときはものすごく怖いが、それでも何か頑張ったら褒めてくれるし、一緒に喜んだり怒ったりしてくれる。
そんな祖父にも内緒で、妻子ある浩晃と付き合うのはやはり心苦しい。だが祖父は、こんなふしだらな行いをした孫をこれまでのように愛してくれるのだろうか。そして――真緒と優々も。
「あっ、もう五時だ」
真緒がポニーテールを揺らして時計を見た。
「ほんとだ。じゃあ、そろそろ帰るね」
「待って!」
腰を上げた真緒と優々は、莉菜の声にびっくりしてほんの束の間、固まった。
「聞いてほしいことがあるの」
ただならぬ雰囲気に、二人はまた腰を下ろす。莉菜が今このタイミングで言うとなれば、話すのに相当勇気がいることなのだろう、と小学生ながらに勘が働いた。