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ブルジョアの愛人
第10章 破滅の理由

初めて生で見た飯尾の顔を、樹里は今でも覚えている。写真で見るより頭髪がわびしく、目が細く、肌が浅黒く、全体的に顔の彫りが浅い飯尾は、樹里が車に乗り込むなりキスをしたのだ。

「ここも、もうグショグショにしてんだろ」

唇から糸を引きながら、樹里のスカートに手を入れてショーツの縦すじをなぞった。
暗闇の中でも、下卑た笑いを浮かべているのが分かるほどいやらしい手つきで。飯尾の虜だった樹里も、そのとき初めて奴に恐怖心を抱いたのだった。

「今日も一日中まんこ濡らしてたんだろ?」

マンションへ向かう途中、電話では絶対に訊かないようなことばかり飯尾は訊いてきた。怖かった。だがどうしても飯尾の股間が気になり、ちらと目をやると――樹里は好奇心に負けた行為を後悔した。

飯尾のスラックスの中央部は、恐ろしいほど膨らんでいたのである。
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