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裸足のprincess
第1章 雪のせい
 「はい。プレゼント」

 ウェイターが隠しておいてくれたのだろうか。

 シンプルだけど上品な白い包み。

 それと、黒い箱。

 包みは手のひら大だけど、箱は腕くらいの大きさだ。

 私は包みから開いた。

 「わぁ……綺麗」

 右手でクリスタルのブレスレットを取り出す。

 二つあって、一つはサファイアブルーが淡く混ざって、もう一つはピンクがかったもの。

 留め具部分にイニシャルが彫られている。

 「ピンクが襟菜の。スペルサティンって言う宝石が入ってるんだ」

 「凄い好きだよ、こういう色」

 「マジで? 良かった。ほら、二人お揃いって今まで無かっただろ。だから、ペアブレス」

 裕也は少し照れくさそうに私の腕に通し、自分のも付けた。

 私のは右手に。

 裕也のは左手に。

 理由を尋ねると、二人で手を繋いだ時に、二つの輪が一つになるようにらしい。

 堂々と言ってくれる。

 絨毯の模様を覚えてしまうくらい、私は俯いていた。

 「マンナーラ・プリミティーボ。最近入った種でね」

 マスターがグラスを持ってきた。

 トレイに乗った二つを裕也が取り、片方を手渡す。

 「イタリアワインの中で、俺が好きな奴なんだけど」

 「裕也の好きなワインて、辛いんだよね」

 「これはそこまででもないよ」

 カチン。

 「乾杯」

 極上の笑顔で言われてしまい、私は顔を隠すためグラスに口を付けた。

 マスターが小さく笑い、カウンターの中に戻る。

 濃い紅。

 それを飲む裕也をついヴァンパイアのように見てしまった。

 似合いすぎる。

 そんな想像をした自分はおかしくなってるんだろう。

 余りに色々起きすぎて。

 「……わっ、大人の味!」

 「襟菜も大人だろ」

 「ふふ。うん、なんか大人になった気分」

 一気に幸せが押し寄せて来た。

 店内を見渡す。

 シャンデリアを彩るような沢山の飾り。

 色とりどりの球が星みたいだ。

 一周年。

 裕也に恋に堕ちてから。

 もう、一年なんだ。

 まだ、一年なんだ。

 不思議。

 グラスをテーブルに置き、一年を振り返る。

 映画館に一人で行った日、手を掴まえられたこと。

 そこから始まったこと。

 海と山を1日で回ったこと。

 仮装してイルミネーションの中歩いたこと。
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