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裸足のprincess
第1章 雪のせい
 「ありがとうね、マスター達も」

 私が頭を下げると、快活な笑い声が聞こえた。

 「なんてことはないよ、襟菜ちゃん。裕也が頼んで来たのはこういうことだ。近々店の内装を変えるんでね、そのファーストカスタマーを自分たちにして欲しいって」

 「マスター、ネタバラシ躊躇ありませんね」

 ウェイターの男が苦笑いする。

 「そうだったんですか!」

 「そうだったんですよ」

 わざと敬語で裕也が返す。

 でも、なんでたった一回来ただけの客にそうまでしてくれるんだろう。

 そういえば、私が風邪の間、裕也はどこに行っていたっけ。

 「なにニヤニヤしてんの」

 「別にー」

 ネタバラシは一つでいい。

 私は幸せで緩みっぱなしだった。

 だから、黒い箱をすっかり忘れていたのだ。

 扉の前で、裕也が箱を開ける。

 中から現れたのは、紫のカラータイツとベルトショートブーツ。

 この冬一番欲しかったブーツ。

 私はもう言葉を忘れていた。

 「絶対気に入ると思った」

 「あ……ありがと、ね」

 舌が上手く回らない。

 店の一角で、周りから見えない場所でタイツを付けると、裕也がブーツを履かせてくれた。

 「ぴったり!」

 「当たり前だろ」

 「嘘! 凄い履きやすい!」

 「良かった」

 裕也がまた抱き締める。

 「じゃ、帰ろう」

 「うんっ!」

 マスターたちに礼を言って、店を後にした。

 さっきとは違う世界。

 裕也に貰ったブーツで、サクサク雪を踏む。

 「似合ってるよ」

 「嬉しいなぁもう……あんなサプライズあると思わなかった!」

 「風邪、治った?」

 「治った、かも」

 家に着く。

 脱ぐのがもったいなかった。

 綺麗に揃えて裕也の靴と並べる。

 「そういえば、ゆう」

 言いきる前に唇を奪われた。

 さっきと違って初めから激しい。

 不意打ちに油断していたせいで、簡単に舌を絡めとられてしまう。

 力強く抱き締められたまま、上を向いて応える。

 私の前に、誰かいた?

 そのくらい巧くて、ついていけなくなる。

 そのまま寝室に入り、ベッドに押し倒される。
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