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愛する、三人のケダモノ達。
第1章 三人のケダモノたち。
 映画が終わり、午後二時前。
 遅い昼食を取り、コーヒーを飲んで先ほどの映画の話をしたり朝陽兄さんの本の話をしたり。
 あのキスの事をわざと避けている。

「伽耶、うちに来る?」

「…えっ、いいの?」

「電車で三駅だし…部屋、汚いけど。」

 紘先輩の部屋は1LDKにベッドと大きな本棚、洋服ダンスで囲まれている。

「お邪魔します。」

 本棚をざっと見て、朝陽兄さんの本はもちろん、色々なジャンルの本が並んでいる。

「インスタントコーヒーしかないけど。」

 マグカップのコーヒーをテーブルに置き、ベッドを背もたれに並んで座る。

「伽耶…俺、伽耶の事…好き。」

「…うん。」

 紘先輩は身体を寄せ、耳元をくすぐる。
 肩を抱き寄せ、首筋にキスをする。

 ワンピースの前ボタンを外ずされ、隙間に手を差し入れる。

 紘先輩は私の胸元を見て、少し眉を寄せる。

「…これ、誰につけられたの?」

 すっかり、忘れていたキスマークに動揺する。胸元をかき合わせ、視線を外す。
 紘先輩の手が私の手首を掴み、ベッドに押し付けられる。

 朝陽兄さんのキスマークのすぐ横を舐め、手で柔らかな胸を寄せきつく吸いつく。

「…ふっ…あっ…。」

 紘先輩の髪にふれ、温かさを身体で感じる。そっと、身体が離れ私の服を整える。

「ごめん。今日、もう帰って。」

 怒ってるんだ…。
 こんな、私嫌いになったよね…。
 ふしだらな女と罵ってくれたら楽なのに。
 バカな女と笑ってくれたらいいのに。

 無言で部屋を後にする。

 帰ろう…。
 また、明日から仕事がはじまる。
 紘先輩と職場で顔合わせづらいな…。

 気がつくと、ケータイを握りしめていた。

『もしもし、伽耶ちゃん?どうしたの?』

 この涙の原因は朝陽兄さんのせいなのに…嫌いにはなれない。
 イトコ、だから。
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