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愛する、三人のケダモノ達。
第2章 発情する、ケダモノたち。
「ただいま。おや、伽耶ちゃん。まだ起きてたの?」

 日付が変わる直前に、朝陽兄さんが出版社から帰宅する。

「おかえりなさい。」

「爽弥はちゃんと実家に行ったかな?」

「あ、はい。夕方の新幹線で。」

 朝陽兄さんの上着と紙袋を受け取る。ネクタイをずらしながら、リビングのソファに座る。

「お夕飯は?」

「外で済ませたから大丈夫。あ、その紙袋かして。」

 紙袋だけ渡し、私は上着を朝陽兄さんの部屋に掛けに行く。

 爽弥君は来週、月曜日に学校でテストを受けるために地元に帰省。まだまだ、自宅は止まれる状態ではないから、ホテルに泊まるらしい。

 リビングに戻り、朝陽兄さんの為にお茶を用意する。

「…でね、橘君。君の用意してくれた、これなんだけど…。」

 朝陽兄さんは誰かと携帯で話をしていた。

 きっと、次の小説の打ち合わせか何かでしょう。緑茶を蒸らし、湯飲みに淹れる。

 ソファの前のテーブルにお茶を置こうと運ぶと、目の前に見慣れない物が無造作に置かれていた。

「あっ…。」

 通話中を忘れて、思わず声をあげる。

「うん。とりあえず、参考にさせてもらうよ。まぁ、ネットから情報をもらってもいいんだけど、やっぱり実際見たり、使ったりしないとね。…あははっ、橘君はエロイなぁ。じゃあ、また。」

 通話を終え、私に向き直る。

「ねぇ、伽耶ちゃん。これ、見たことある?」

 テーブルの上に置いてあったのは、ピンク色のローターと水色のバイブ。家庭で使うような、電動マッサージ機。
 
 もちろん、今だと女性向けのアダルトグッズの情報はネットでかなりオープンに紹介されているから、見たことはある。

「え、あ、はい。あの、ネットで色々…。」

 しかし、実物ははじめて見る。

 ローターと電マに関してはあまり抵抗はないが、バイブは目のやり場に困る。

「今度、とりかかる小説の参考にと思って用意したんだ。」

「…純愛路線から外れるのですか?」

「官能小説の依頼が来ていてね。はて、じゃあ官能小説とはなんぞやと。女目線で物語を進めるのか、男目線で物語を進めるのか、悩み中なんだ。」

「はぁ。」

「…いや、今決めた。女目線で行こうか。こう、初な女が段々と性に目覚めて開花させて行く様子を書いてみようか。」

 朝陽兄さんは目を輝かせ、その卑猥なおもちゃをみつめる。
 
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