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愛する、三人のケダモノ達。
第3章 嫉妬する、ケダモノたち。
 頬の涙と耳元に囁かれた声に目が覚める。

「…伽揶ちゃん、大丈夫かい?」

 ベッドで寝ている私を朝陽兄さんは心配そうに覗き込む。大きな綺麗な手が私の頬を包み、繊細な長い指が涙を拭う。

「あ、朝陽兄さん…。」

「うなされていたんだよ。」

「…夢を見ていたんです。何か、悲しくて…寂しい。」

 朝陽兄さんは私の額や頬に口づけをする。

 頬に流れる涙も、そっと唇が触れる。

「…そうだ、お客様…橘さんは帰ってしまいましたか?」

「リビングのソファで爆睡しているよ。酒が弱いのに結構飲んでたからね。どうして?」

「そうですか。あ、いえ。朝陽兄さんのお客様なのに何もしないまま寝てしまって…。そうだ、リビング片付けないと…。」

 時計を見ると、深夜二時過ぎ。

 かなり、私も寝入ってしまっていたのね。

 ベッドから起き上がろうとすると、朝陽兄さんは私の肩に手を添え軽く押さえる。

「…いいから、このまま寝てしまいなさい。…眠れないなら、添い寝してあげようか?」

 朝陽兄さんは、微笑みながら私の首筋に顔を埋める。

「昔は良く、一緒に眠ったね。覚えているかな?」

 確かに、小さな頃本家に行けば四人で仲良く布団に転がって寝たりしたな。

 朝陽兄さんは怖い話や楽しい話をしてくれた。

 その度に、皆で手を繋いで怖がったり眠気が飛ぶくらい大笑いしたりして。しまいには、大人達に怒られたり。

 懐かしい思い出に、クスッと笑う。

「何が面白いの?」

「いえ。昔、私達が仲良くしていた頃を思い出したんです。」

 朝陽兄さんはベッドに上がり、私の側に寝転がる。

「…昔、もっと昔。本当に四人は仲が良かったんだよ。決して離れることはなく、互いを支え補っていたんだ。」

「朝陽兄さん?」

 朝陽兄さんは私の肩を抱き、腰を寄せ耳元に優しく囁く。

「…伽揶、愛しい私の伽揶。」

 この、声色に身体がゆっくりと反応する。

 吐息が。触れる、指先が。

「…もう、お休み。」

 朝陽兄さんの心臓の音が、私の鼓動と重なり身体が一つになったような錯覚。

 なら、もう悲しい夢は見ないよね。

 まだ、色々話がしたかったが朝陽兄さんの声が眠りの中に静かに誘う。

「…ねぇ、伽揶。いつか、君を悲しませることがあったとしても…。私達がいるからね。安心して、お休み。愛しい子…。」
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