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ただ、あなただけに愛を
第1章 ライン
だが、与えられた優しい言葉は、そんな当たり前を忘れさせる。現実を見ても惨めになるだけ、ならば夢に浸ったまま、一日を過ごしてしまいたかった。
「ユキ、大好きっ!」
峰子がユキに飛びつけば、ユキは峰子の背に手を回し応える。ホテルを出ても、まだ幸せな気分は続いていた。
ひとまず何か食べてから、これからの予定を決めようと話した二人は、適当な店に向かおうと歩く。ホテル街を抜ければ、日曜日の街は人に溢れ賑やかだった。
「ねぇユキ、こうして歩いてたら、恋人同士に見えると思う?」
腕を組み歩く姿がショーウィンドウに映るのを見て、峰子はユキに訊ねる。するとユキは峰子の頬に軽くキスすると、穏やかな笑みを見せた。
「僕は恋人同士だと思って歩いてたんですけれど、峰子は違うんですか? 誰がどう思っても、僕は峰子さんのものですよ」
ユキの笑顔に、峰子は胸が高鳴る。数時間前まで繋がっていた子宮がきゅんと締まり、手先まで痺れるような感覚がした。食事など放り出して、時間の許す限り抱き合いたい。欲求が湧き上がった、その時だった。