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ただ、あなただけに愛を
第1章 ライン
「真壁、俺だ。悪い、今日は用事が入った。例のレシピは後で送る、お前なら自分で作れるだろ」
手短な電話を終えると、再び男は峰子に視線を送る。蒼一朗にそっくりで、しかし蒼一朗とは全くの別人。峰子は少女のように、胸を高鳴らせていた。
「茶はいらない。結局のところ、目的はヤる事なんだろ?」
蒼一朗との違いが、また一つ。蒼一朗より、男の方が乱暴で品のない喋り方をする。峰子は直球に直球で返され面を食らうが、男は構わず続けた。
「梅雨に入って、最近は野宿もキツい。寝る場所をくれるなら、お前と寝てやってもいい」
「の、野宿? え、キミ、ホームレスなの?」
「別に、家に帰りたくないだけだ。で、どうするんだ?」
会話の中で感じた違和感に、峰子は首を捻る。一人暮らしの人間ならば、よほどの事情がない限り、野宿などしないはずだ。そして、彼の肌から感じる若さ。嫌な予感がして、峰子は疑問を口にした。
「あのさ……キミ、今何歳?」
「今年で、十六歳になる」
蒼一朗と初めて会った時、蒼一朗は二十八歳だった。つまり目の前の男は、その時の蒼一朗の一回り下だという事だ。