この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなただけに愛を
第1章 ライン
(そりゃ、若く見えるはずだわ……)
少し発育のいい男なら、十六にもなれば大人とさして体格も変わらない。ましてや私服ならば、成人に見えても仕方なかった。
「ヤる気がないなら、それでいい。じゃあな」
峰子の硬直を拒否と受け取った十六歳の少年は、きびすを返し立ち去ろうとする。
「ま、待って!」
だが峰子は腕に抱きついてそれを止めると、もう一つ訊ねた。
「キミ……名前は?」
「――紅男。鬼面(おもの)紅男だ」
赤い髪をして、名前が紅男。それはとても本名とは思えない。しかし、名前が本物か偽物かなど、峰子にとって問題ではない。ようするに、ベッドの中で呼べる名前があればそれでいいのだ。
「あたしは鳥海峰子。年齢は……聞かなくてもいいわよね?」
「興味ない。で、どうするんだ?」
紅男に訊ねられて、峰子は財布の中身を思い出す。ホストクラブの代金に、ユキのアフター代。札を全て渡してしまったため、残るのは小銭とカードだけである。
(でも、宿が欲しいなら、ホテルじゃなくてウチでもいっか)
少年と知って、峰子の中に少し隙が生まれる。一晩くらいなら家に上げても平気だろうと、さして悩まずに結論付けた。