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ただ、あなただけに愛を
第1章 ライン
「あたしの家でいい? ちょっと散らかってるけど、寝る分には問題ないから」
「分かった、じゃあ案内しろ」
年下にも関わらず態度の大きい紅男を連れて、峰子は街を引き返していく。腕を組んで歩けば、まるでかつての蒼一朗が戻ってきたようである。胸が躍るあまり、峰子は自分が蒼一朗に邪険にされた理由をすっかり忘れていた。
それを思い出したのは、部屋に戻り玄関を開けた瞬間だった。
「……汚い」
靴箱があるにも関わらず、何足も出しっぱなしにしている靴。もう六月にも関わらず、くたびれたブーツまでそのままだった。紅男は眉をひそめ、廊下の先、開きっぱなし――否、服やゴミに溢れ閉める事の出来ない扉の向こうを見つめる。峰子は前に立ち背伸びして視界を遮ろうとするが、紅男の背はそれ以上に高かった。
「な、生ゴミはちゃんと処理してるから、大丈夫! ちょっと服どければ、座れるから」
「よくこれで人を呼べるな、お前」
紅男は明らかに峰子を蔑んだ目で睨み、溜め息を漏らす。だがすぐに靴を脱ぎ部屋に上がると、峰子に強く語った。
「こんなゴミ部屋で寝るとか断固拒否だ、掃除させろ」