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淫風の戦記
第4章 紫富の金
今すぐに救出に向かいたい香羅。
敵の罠に嵌まると反対する枇杷。
桔耶が人質にとられている今勝ち目などあるはずもない。

「どうすれば!?」

悲鳴のような香羅の問いに答えられる者はいなかった。
宇和水軍にとって重い沈黙の時が訪れ、気が付けば朝日が昇っていた。

………………

その日、峰島にひとりの男が上陸した。

紫富(しと)という。青白い肌の美男で、細い目が微笑みを湛えている。人懐っこい表情や軽妙な言葉遣いは商売人を思わせるが、所作に気品があり、名家の御曹司のようでもある。全身を覆う大型のマントは右半身が赤銅色、左半身が錆色、足元には漆で固めた皮のブーツ。異様と言って良い。

法眼との面会を求めた彼は、大陸渡りの珍宝品を売る商人だと自らを紹介した。

「大陸渡りの商人と言うが証拠は?」

法眼の問いに紫富が答える。

「まずはこちらを」

紫富が法眼に差し出したのは、大陸のとある王家の印である。親指よりも一回り大きな黄金の塊に、繊細な細工が施され、龍の彫像が付けられている。

「印に刻まれている通り、私は王家専属で商いをさせて頂いております」

紫富の立ち振る舞いは明らかに自国の人間とは異なっているし、王家の名も知られたものだ。はっきりと印の字を読めない法眼だが、信じる方向に心が動いている。

「もう一つはこちらを」

従者四人では相当に重そうな三尺四方の木箱が運ばれる。木箱の角や辺は鉄で補強されており頑丈に作られていることが分かる。

「名品ではないのですが、珍しきものかと」

従者に木箱を開けさせる紫富。
現れたのは箱にやっと収まるサイズの金塊であった。

「おおっ!」

さすがに法眼も驚く。

「本日は、この金塊で法眼様から何かお買い上げ出来ればと存じます。もちろんお近づきのしるしでございます故、金塊の半値程のものをお譲り頂ければ嬉しく存じます」

法眼の脳裏からは、紫富が何者かという疑惑はすでに消えている。今は、この金塊をいかにして手に入れるか、それだけである。

「しかし…」

法眼は唸る。半値と言われても、彼の眼から見れば島一つくらい買えてしまう程の金塊なのだ。

「(峰島から搾取する税の二十年分で足りるかどうか…)」

欲深いだけのことはあり、モノの価値は正確に測れる法眼であった。
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