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淫風の戦記
第1章 茂里水軍の逆襲
そこに人はいたのか。皆が同じことを思った。
戊辰が飛び退いた甲板後方に一人の男が立っている。

「今まで何をしていた!部下は全滅だぞ。なぜ助けなかった!」

戊辰の叱責を男は聞いているのかいないのか。

「…申し訳ない。出てよいものか、悩みました故」
「どうにかしろ」
「分かりました」

男は枇杷の方を向く。他の黒装束と枇杷の容姿は変わらないが、とにかく男は枇杷の方を見つめた。

「香羅殿のこれまで奇襲は天晴れながら、今回は戊辰殿が裏をかいた。しかし、それを見事に破ったのは枇杷殿の速断です。主の危険をいち早く察知し、予定の作戦を中断なさらなければ、今ごろ香羅殿は戊辰殿に凌辱され、全てを奪われ連れ去られていたでしょう。さすれば宇輪水軍に明日はなかった」

その通りである。枇杷は何も言わない。

「今、戊辰殿は窮地に陥りましたが、居合わせた私に守備を命じられた。私も枇杷殿やご一党と真っ向から戦って無傷ですむとは思いませんが、もし戦われるとのことでしたらお命を頂きます。ということで、ここは痛み分けと致したいがいかがかな?」

戦えば自分が勝つという男の言葉に一人の黒装束が踏み込もうと構える。が、枇杷が制する。

「分かりました。こちらも犠牲が大きい。互いに引き上げることで了承します。ただし、あなたのお名前を伺いたい」
「結構。私の名は、黒須(くろす)。素浪人のところを戊辰殿に拾って頂いた御恩によりお仕えしている。またお会いすることになるでしょうな」
「…黒須殿、仕える主を選ばれることだ…」
「…失礼致す、枇杷殿…」

いつの間にか小舟が横付けされている。黒須が呼んだのだろう。黒装束が道を開けると、無念に血走った目で枇杷、そして香羅を睨み、戊辰が飛び降りる。香羅には、その視線を跳ね返す力は戻っていない。続いて黒須が軽く頭を下げてから飛ぶ。枇杷の緊張はようやく解けた。
枇杷は黒須が尋常ではない男と感じた。同時に、それほどの逸材がなぜ戊辰のような男に…?とも思わざるを得なかった。戦うとなれば…憂鬱にならざるを得ない。

こうして峰島の戦は終わった。港に上がっていた味方の兵も引き返し、宇輪の港に向かう。戦自体は引き分けだが、宇輪水軍の犠牲は多く、何より香羅の姿がない。戦の帰路、香羅が船室で休んでいる。宇輪水軍にとっては初めてのことだった。
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