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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと






「可愛い姫猫……人間には性欲がある。お父様は、お母様の浮気を少しも恨めしがってはいない。よそにつくる恋人がたった一人など、ウブなものだ。お母様が外の世界を見てくれたお陰で、お父様はお前という愛らしいお人形と話が出来るようになったのだ」

「お父様は、お母様が好きではないの?」

「好き、だと?そういった理屈は、人間に備わるという繁殖本能に等しく無意味だ。感情だの好意だのは二の次三の次、いっそ幻覚だ。さりとて姫猫、感情を頭ごなしに否定してはならない。お父様は姫猫を愛している。何故だと思う?お前の乳房が愛おしいからだ。お父様のペニスをご覧。…………そうだ、ぐっ…………ほぉら、触ってごらん。…………くく、良い子だ。姫猫は上手いね。このように、肉体が対象に好意を示せば、いずれは感情が追いついてくる。はは、難しいかい。例えば、姫猫は甘いケーキが好きだろう。それは姫猫の味覚が、甘いケーキから幸福感を得るからだ。幸福感を得る食べ物は、肉体のあるじである姫猫の本能が気に入る。それが、肉体が対象にいだく好意だ。お父様はお父様を気持ち好くする乳房の持ち主が好きだ。もちろん、触れば可愛らしく喘ぐ姫猫の声も、顫える肉も、メス臭い汁を垂れ流すヴァギナもだ…………姫猫の全てが、お父様を良くするんだよ」

「それでは、若い恋人達はどうなるの?学校の授業では、人間が裸で抱き合うのは、子供を欲するためだと聞いたわ。子供を欲しなければ裸になる機会もない。若い人達は、どうやって好意を覚えれば良いの」

「そうした幻想は捨てろ、姫猫。どこぞの馬鹿な学者が論じる繁殖本能とやらより、甚だ先に、人間には性欲がある。まことに繁殖が人間の第一の目的とすれば、その肉体は、魚類や鳥類、草花のように、空気中で受精するよう造られていたはずだ。それが哺乳類は凸凹を合体したがる。それこそ、人間の重きが繁殖でないところにある所以だ」
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