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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと
ゴールデンウィークが近づいていた。ある放課後、私は生徒指導部の呼び出しを受けた。
「いじめられているんですって?」
面会室にいたのは、お姉様の贔屓にしている店の洋服でめかし込んだ、教員らしからぬ凄艶な美女だ。
怜悧な目をした黒い癖毛の宗教学者は、何食わぬ顔で私を迎えた。
「蓮美先生……」
「助けてあげるわ」
蓮美先生は、この春、非常教員として教育現場に復帰したらしい。学会の仕事もひと段落したのだという。
お母様と私の、不幸の元凶。
「結構です」
「貴女、このままだと退学よ」
「そうですか」
私の噂は、教師らも眉をひそめ出していた。真偽はどうあれ、生徒らに淫らな捏造をさせて風紀を乱している私は、どのみち厄介者だろう。
「っっ……」
音も立てずに腰を上げた蓮美先生が、身を乗り出した。私の真横に、彼女の妖しい重みがかかる。
お母様を誘惑した悪辣な指が、私のおとがいを持ち上げた。
「何十人に股を開いた娘なんて、帰っても、まりあだって喜ばないわ」
「…──っ」
その通りだ。
売春は根も葉もない噂でも、私は何十人もの同級生、上級生に女の秘境を遊ばれている。彼女らの親族の男達にも、アヌスから精液を注がれている。
「それでも私は、心まで穢れていません。お母様は、愛せば愛は返ってくると、私に教えてくれました。私はお姉様のように、賢く生きたりなんかしない。正直に、お母様の娘だと胸を張れる私でありたい。先生が助けて下さらなくても、神様が私を助けて下さいます」
「あら、ふふっ、そう……」
小馬鹿にした笑い声が、蓮美先生の喉をこぼれる。
「神様も大変ね。貴女のように見返りばかりあてにする偽善者のために、存在してもいないのに、過大評価されるんだから」
「貴女、は……。っっ?!」
私の目路が暗転した。
数秒のキスが、私の唇を離れていった。
「不細工な女はキスも不味いわ」
「…………」
「きよらさん。貴女、私を恨むのは自由だけれど、このままではいつか孕まされるわよ」
血の気が引いた。
不特定多数の男と女の玩具になるか、蓮美先生の持ち物になるか。
私には、二択しかない。