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淫徳のスゝメ
第4章 私が天涯孤独になったこと
「その遊さんという男性がまぐわっていたお父様は、酷い悪党なんです。姫猫の初体験の相手について、久美子さんもご存知ですよね?私達はまず、そのために姫猫を軽蔑していた彼女の母親を始末しました。そして、折角なら彼女を所有物としていたその男に罪を被せようと考えていて……。もちろん、久美子さんが罪に問われる心配はありません。私達も。姫猫には頼もしいパトロンがいます。あとの辻褄は彼女が合わせてくれるから」
「もちろん。こんな愉快なイベントのために、私が怖気づいたりしないわ。それよりまづる、みゆきに恨まれてよ。私だけ、誘ってくれるなんて……」
「いいえ。みゆきちゃんのことだもん、今頃、誰かとお楽しみでしょう。呼び出す方が恨まれます。それに、久美子さんにお声かけしたのには根拠があるんです。準備はしてきて下さいましたか」
久美子さんはバッグを下ろした。出てきたのはゴールデンウィークの遊戯室で見たのと同じ、刺青の道具だ。
「姫猫、また中断。この続きは久美子さんのパフォーマンスを観賞しながら、あとでゆっくりしようね」
打ち合わせの通りと言えど、私は二度目のお預けに辟易した。
私を貫くはずだったまづるの指が、また、お父様に独占される。
まづるはお父様の頭髪を掴んで、断ち鋏で刻んでいった。
お父様から、数十分前の強気は消失していた。時折、弱々しい嘆願がこぼれるだけだ。性能の悪い稲刈り機を施したあとのごとく不揃いな短髪になったお父様の頭は、それから剃刀にかけられた。
じょり、じょり、と、小気味良い音がお父様の頭を歩く。
まづるがお父様を丸刈りにすると、シャンデリアの炫耀を吸った白い頭の節々に、赤い線が入っていた。