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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
「きよらちゃんは一番の売れっ子ちゃんだからねぇ。君を買い取りたいとおっしゃるお客さんは、結構いるのよ。でも、それはウチにとって大損害なの。タダで働いてくれて、おまけにこんなに可愛い女の子、ボクは絶対手放したくない。店長、今日も人気シェフのお料理を取り寄せたし、デザートを作らせたパティシエは多分きよらちゃんの屋敷にいたのより敏腕よ。だから見捨てないでちょうだいね」
そう、私を所有したがる客は、絶えなかった。
接客において要望を拒否することは禁じられているが、身請けに関する申し出については、商品自身に判断権が委ねられている。
私がここにとどまるのは、店長の事務的な好意を哀れんでのことではない。
ここを訪う客達は、ろくでもない人間ばかりだからだ。
高学歴に高収入、やんごとなき人間としてのマナーも立派だ。その分、いかれている。私のお父様のように。
おそらくお姉様以上にセックスしている私は、それが金に変わる業界に幽閉されておきながら、一文なしだ。洋服を新調出来るだけの資金もない。だから、食事はいつも事務室だ。
私は店長に連れられて、地上へ移った。数人の従業員らとすれ違った。彼らは店長に一礼しては、裸体の私にも彼ら特有の挨拶をした。
今夜の献立は、六種のアラカルトの盛り合わせに、アスパラガスの冷製スープ、羊のチーズのフィットチーネ、マカロンが三つ飾ってあるプティガトー──…。
フィットチーネが残り少なくなってきた頃、にわかに店長のかさついた指が私の乳房にうずまった。