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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
梅雨明け特有の暖気が浮かんだ回廊、私は私室に向かいながら、まづるに今しがたの電話の内容を反芻した。
蓮美先生は、黒魔術の研究を始めたらしい。呪術に占術、薬草、人体の生理的現象がもたらす超科学──…蓮美先生曰く、人間の創造する悪魔はあるじを裏切らないという。
「出来の良かった元生徒の明るい未来に、是非貢献したいそう。惚れ薬でも媚薬でも、お望みなら命運まで占って下さるそうよ。どうせインチキでしょう、そういうお遊びも暇潰しになると思うわ」
「姫猫がそのつもりなら、行こうかな。蓮美さんって一度見たことがあるだけだけど、美人は美人でもいけすかない。ミステリアスを鼻にかけてる、とでも言っておこうか。元教え子の姫猫には悪いけど、インチキならカラクリを暴いて、出鼻を挫いてやろうよ」
「まぁ、酷い。もちろん私も手伝うわ」
私達の夜は長い。
充足など、嚮後への期待など微塵も見出せない私とまづるは、そのくせ安寧を貪るように互いを求める。
「ね、有本さんと……何してたの……」
「再現してあげましょうか」
「酷いことじゃ、なければ……」
薄ら闇にくるまって、私はネグリジェを脱ぎ捨てた。
まづるのドール同然の容姿をいっそう華やがせる巻き毛を遊びながら、下着だけの残った彼女の肢体から視線を逃して、キスを押しつける。