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淫徳のスゝメ
第1章 私が淫蕩に耽るまでのこと
ゴールデンウィークが明けた翌週、私は昨年の担任教師の呼び出しを受けた。
きよらのような芋臭さはない、されど清楚な顔立ちは、やはり教師独特の威厳を補翼し、艶がある。腰まである黒髪は、緩やかな癖を描いており、出勤用のモノトーンのスーツをいくらか華やげている。
蓮美先生は、校内でこそ純朴な風采を繕っているが、間近で見ると瞭然だ。そのスーツはラッセルの幅狭レースやらラメやらが散りばめてあり、彼女自身の身を飾ることにおけるこだわりが窺える。もとより、蓮美先生がいつも着用している洋服は、私の行きつけの店のものだ。
今や教師でも学者でもない、母の愛人。
私の中で、蓮美先生を定義するものはそれだけだった。
「何のご用でしょうか、先生」
しんとした視聴覚室は、遮光カーテンが下ろしてあった。均等に机の並んだ室内は、ホワイトボードを覆うほどのスクリーンや機材が備えてあるにも関わらず、どこかがらんどうな感じがある。
その中で、私と蓮美先生の距離は近い。
「可哀想に」
妹でも見るような慈しみ深い双眸が、私を捕らえた。
蓮美先生が一歩、また一歩と、私に距離を詰めてきた。