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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
* * * * * * *
蓮美さんは、私を三階の屋根裏に案内した。
斜傾した天井に日当たりに劣った間取り、そこにはベッドや鏡台、調度品がところ狭しと配置してある。
屋根は一部が開閉出来る仕組みだ。外から見えていたパゴダ風の突起は化粧室ほどの個室だった。壁のほとんどがマジックミラーになっているところからして、おそらく昔、頭やら腕やらを打ちつけそうな独房でセックスした恋人同士が、野外性交の気分を賞翫していたのだ。
まもなくして、胡蝶という名の女が連れられてきた。
年端や、ともすれば風貌も、どこか出逢った頃の舞さんに重なる女だ。会社勤めをしている雰囲気の彼女は、だのに日曜日の昼間から、例のごとくバスローブ一枚をまとっているだけだ。
「美しい女性でしょう。これはもちろん本名じゃないわ。ここで働く女達は、いかなる権限も私が預かっている。そう、この家にいる時だけは、肉体は私のもの……私に管理される意識を持たせるために、外での名前を捨てさせているの。彼女は最近雇ったのだけれど、困ったことがあってね」…………
蓮美さんが話すには、幼少時、胡蝶は家庭で暴力を受けていたらしい。彼女の母親は、狼藉者である胡蝶の父親とはとっくに離縁したものの、彼女自身も心に傷を負い、長年、娘に辛く当たってきた。胡蝶は、蓮美さんが学会で知り合った研究者の姪だという。彼を通して二人は知り合い、そして、蓮美さんの例の怪しげな術によって、胡蝶の母親は初めて自発的に地域の活性化運動に参加するまでになったらしい。