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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと

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 蓮美先生、否、稜の占術が啓示しなかった嚮後を迎えて彼女を打ちのめす算段でいた私は、まもなく打ちのめされることとなった。





 その日、最後の講義中、私の元にメールが届いた。発信主は有本さんだ。

 有本さんは、お兄様の小遣いを遥かに上回る収入源だ。私は例のごとく急な呼び出しの用件を読むや、まづるに約束の反故を詫びて、閉講と同時に校門でタクシーを捕まえた。





 屋敷に至るや、有本さんは私に浴室を勧めた。メイド達は至れり尽くせり、仏野の屋敷にいる顔触れと同じくらいには、私の好みの香りを把握して、私の扱いに慣れていた。


 着替えが用意してあった。

 私の贔屓にしているブランドの最新作だ。

 淡いパールピンクのキュプラで仕立ててあるジャンパースカートは、同系色のレース地が重ねてあって、ハイウエストの切り替え部分には十ほどのリボンが濃淡をつけてあしらってある。肩紐にはエンジェルフリル、胸元やスカートの裾には桜の模様が透かし編みしてあるレースがたっぷりたたかれている。七月でも、有本さんの屋敷は冷える。パステルカラーのさくらんぼ柄のシフォンのボレロが、私の肩に着せられた。



 私は、来客がお茶を振る舞われるように贈られた洋服をまとって、有本さんの私室に通された。
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