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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと



「貴女を聡明なお嬢さんと見込んで頼みがあるの」



 長い長い勤労を交わし、有本さんは私の容姿を賛美して、長い長いはかなしごとをのんべんだらりと引きずった。


 私が親しげな指に小さく喘いで、普段であればここで娼婦が呼ばれてくるか、真新しい洋服が剥がれるかのどちらかのところまで至った時のことだ。


 有本さんの目が、前述の切り出しと共にふっと神妙な色をまとった。


「有本さんのように素敵な女性のおっしゃることでしたら、私、喜んで従いますわ」


 既にほぐれかけていた私のヴァギナの深奥は、屈従の台詞だけでひとしお烈しく劣情を燃やした。


 万人をからくることを当然としている私でも、時にひれ伏したくなることがある。
 それは、加虐に併せて私に備わる例の性質がもたらす衝動か。ひとたび跪きたくなると、私は相手が有本さんでも、先日のように顔も名前も甄別しかねる使用人でも、構わなくなるのだ。



 可愛い子。そう言って、有本さんは私を引き寄せまたキスをした。
 このところ業務に追われてでもいるのか、その指は心なしかかさついていた。私の尾てい骨を滑り落ちた有本さんの右手がスカートをめくり上げて、臀部をじかに撫で回し出して、分かったことだ。メイド達は、私に下着をつけなかったのである。



「面白い薬を手に入れたの」

「薬、ですか?」

「貴女もきっと気に入るわ」



 美しい歌でも歌う調子で、有本さんが話し始めた。


 それは、服用した人間を一週間ほどの高熱が襲い、極度の体力低下と脱水によって死に至らしめるという毒薬らしい。その正体は人工ウィルス、患者は医者にかかったところで新種の風邪だと診断される。
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