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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと




 満たされない。

 世界は欺瞞と偏見ばかり、馬鹿みたいにめでたい人間、独善的な彼らが我が物顔で蔓延る中に、私とてほんの少し譲歩すればとけこめたのか。或いは、きよらのように破滅したか。


 どのみち私の器量では、幸福を理解することも出来ないのだ。


 高貴という呪われた血が体内に通い、私をいやが上にも桎梏する。



 所詮は私も、採取の連鎖から外れていなかったのだ。

 ピラミッドの頂点と、そして底辺。

 採取されやすい種類の人間こそ底辺に密集していても、上層は上層で、人間の利己的本能の餌食にならないわけがなかった。



 くだらない。くだらない。何のために生きているか、失望を憤怒に変換して、憤怒を官能の焔に焼却してきた。



 燃やしても燃やしても湧いて出る、ゴミのような私の憤怒だ。





 最後にまぐわったお兄様より、まづるの指を印象強く思い起こせるのは、私の深層心理がいつしか彼女を誇張せしめてしまった所以か。
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