この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
満たされない。
世界は欺瞞と偏見ばかり、馬鹿みたいにめでたい人間、独善的な彼らが我が物顔で蔓延る中に、私とてほんの少し譲歩すればとけこめたのか。或いは、きよらのように破滅したか。
どのみち私の器量では、幸福を理解することも出来ないのだ。
高貴という呪われた血が体内に通い、私をいやが上にも桎梏する。
所詮は私も、採取の連鎖から外れていなかったのだ。
ピラミッドの頂点と、そして底辺。
採取されやすい種類の人間こそ底辺に密集していても、上層は上層で、人間の利己的本能の餌食にならないわけがなかった。
くだらない。くだらない。何のために生きているか、失望を憤怒に変換して、憤怒を官能の焔に焼却してきた。
燃やしても燃やしても湧いて出る、ゴミのような私の憤怒だ。
最後にまぐわったお兄様より、まづるの指を印象強く思い起こせるのは、私の深層心理がいつしか彼女を誇張せしめてしまった所以か。