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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
メールが届いた。律子だ。
古株の彼女には、会議中の私用を咎める上司もいない。メールには、私に対することこまかな労りやら末梢的な報告やらが打ち込まれてある。
「姫猫さん」
三十行の恋文を読み終えた私の耳に、脂の乗った、老いた高い声が聞こえた。
「虫が増えているみたい。姫猫さん達のお部屋は大丈夫?あれだったら、蚊取り線香があるからね。そこの引き出しに入っているわ、なかったら取りに来て頂戴」
「有り難うございます。大丈夫ですわ、お義母様」
「律子、遅くなるって?」
「ええ、次の企画展の打ち合わせが難航しているようです」
「そう」
五月蝿い姑が出て行くと、私はスマートフォンを返信画面に切り替えた。このスマートフォンも、丸井の名義で使っているものだ。