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淫徳のスゝメ
第5章 私の暗黒時代のこと
「そういう遊びは、想像上でこそ面白いの。お化け屋敷に入って楽しめても、実際の幽霊に会って喜ぶ人はいないでしょう?小説や絵画も同じ。確かに私が傾倒している絵画は残忍な面もあるけれど、ああいうことを貴女としたいとは思わないし、あれは芸術として観賞の価値があるだけよ。姫猫が教えてくれた小説、先日、読み終えたわ。令嬢の身分を隠して使用人になって、そこの奥方と不倫する話。ヒロインは妹とも関係を結んでいて、セックスの描写はさすがといったところかしら。私、思わず恥ずかしくなってしまったくらいだわ」
「律子は、セックスが恥ずかしいのかしら」
「裸になって恥ずかしがらない人間はいない。愛すること、恋だって、羞恥なしでは出来ないわ。羞恥を乗り越えられないのが恋、乗り越えてでも相手にぶつかれるのが愛かしら。……何てったって、愛する人には触れたいもの。私が晒け出せば、姫猫も応えてくれるでしょう。愛は、それまでの私自身を変える。一種の神憑りとでも言っておきましょうか。でもね、エゴイズムや乱暴は、傷つけ合うだけ」
底なしの喪失感が私を襲う。
律子も、所詮は偏見の塊なのだ。
彼女が心酔する絵画も、恥ずかしくなったという小説も、私にしてみれば現実味に溢れていた。けだしまづるにしてみても。
「姫猫……。余計な心配なんかしないで。甘えたな貴女のことだもの、夫婦マンネリでも懸念しているのかしら」
律子の手が、私の太ももをからかっていた。
義母達の目を気にして寝間着姿で浴室から戻ってきた私の肉体は、下着はとっくにつけていなくて、律子の指が割れ目に至るとダイレクトな質感を得る。
「愛してる……。姫猫。他の誰もいらないわ、特別な刺激だって必要ない……貴女がいてくれるだけで、私には幸せすぎる刺激だもの……」